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トップ>ペット法務/7.ペットの売買




購入した仔犬に病気や障害があった場合、ペットショップ等売主は病気に感染していない(又は障害のない)同等の犬に交換するか、飼主の希望に応じて犬の治療代を弁済しなければなりません。動物取扱業者にはプロとしての善管注意義務が課せられていますので、自己に故意又は過失がなかったことを立証しない限りこのような場合、売主の債務不完全履行の責任を負います。店で買ったテレビの映りがよくないという場合が典型的な債務不完全履行の例ですが、その場合売主は完全な給付(映りのよいテレビの給付)を請求されるのと同じです。
初めから病気の仔犬を引渡されたと飼主が説明してペットショップ側が納得してくれれば問題はありませんが、引渡した時点で病気に感染していなかったと主張されると、いつの時点で感染したのかを証明するのが困難なことが多く、水掛け論になったり、やむなく泣き寝入りするということになりがちです。ペットの引き渡しを受ける前に、健康診断や予防注射、狂犬病注射などを済ませているか確認することが大切です。血統書の交付に関する事項についても、文書で確認しておきます。(約束の血統書がないなど、血統書の不適合に関する問題の発生は、事前に予防しなければなりません)


生きものであるペットの購入後、一定期間内に死亡した場合、又は先天性の病気に罹っていたことが判明した場合の取り決めは、売買契約書に記載しなければ、あとあと問題になります。生きものの取引については、売買契約の時点で「引渡し後1ヶ月以内に病気で死亡した場合は同等の犬を無償で渡す」、「引渡し後6ヶ月以内に病気で死亡した場合は、同等の犬を10%の価格で渡す」等の特約が付いている場合もあります(別途、保険料としていくらか料金がかかる場合もある)。
引渡し後一定期間に発生した病気・死亡事故につき、予め取り決めをして、問題の先送りをしないことが肝要です。但し、「当ペットショップは引渡し後のペットの責任は一切負いません」と契約書に書いてある場合において、引渡し後数日でペットが死亡したときでも、獣医師に診断書を書いてもらい、死亡の原因となった病気等が引渡し前からあったことが立証できれば「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は無効とする」(消費者契約法§8T@)を根拠に、ペットショップに損害賠償を請求することができます。

問題の犬が特定の親から生まれたオスで1匹しかいないなどの特殊な場合は、「特定物取引」に該当します。売主・買主の一方又は双方とも、当該犬が病気であることを知らなかったのであれば「隠れた瑕疵」があるとしてペットショップが瑕疵担保責任を負います。売主は無過失責任を負いますので、仔犬を治療して完治させなければなりません。病気の程度がひどく完治しないことが確定したときは、病気でないもう1匹のオスはこの世に存在しないので、買主は契約を解除することも、損害賠償を請求することも、代金減額請求をすることもできます。

*マイクロチップ装着義務化
2022年6月より改正動物愛護管理法が施行され、販売業者は、犬猫にマイクロチップを装着させることが義務となりました。獣医師がマイクロチップ(直径約1.4o×長さ約8.2oの円筒形の電子標識器具)を装着するには、通常の注射針より少し太い専用のチップ注入器を使って、背側頚部(首の後ろ)皮下に注入します。痛みは普通の注射と同じくらいで、鎮静剤や麻酔薬などは、通常は、必要ないとされています。15桁の数字が記録されたマイクロチップを専用装置で読み取ると、犬猫の情報のほか、飼主の情報もわかり、迷子になっても探しやすく、飼育放棄も減ると期待されます。


*病気のペットの売買契約に係る紛争処理例(東京都消費者被害救済委員会、平成 18 年6月)
共に同一のペットショップから買った生後2ヶ月前後の犬(約20万円)が、買ったときから病気であったという理由で契約解除及び治療代等の損害賠償を求めたケース。
事例A(50代男性A、フレンチブルドッグ、気管支炎と先天性心疾患と診断される)
Aは平成17年1月犬を引取ったが、5日後に動物病院で診断を受けさせたところ、気管支炎と先天性心疾患と診断された。
業者は、気管支炎は認めたものの、先天性心疾患についてはレントゲンで精密検査必要として認めず、一方、気管支炎のままレントゲン検査をすると犬の身体への負担が大きいと獣医師から説明を受け、Aは心疾患検査は断念した。
業者が犬の交換を認めず、Aの犬に対する愛情も生まれてきたので、この犬を飼い続けることとし、業者に30万円の損害賠償を請求した。
消費者被害救済委員会における紛争和解において、Aが犬を引取り、業者が犬の代金半額及び約7年分の治療代として合計25万円を支払うことで両者合意した。
売買契約書には、重大な先天的欠陥の判定は業者の指定する獣医師の判断によるとしていたり、消費者に一方的に不利な内容となっていて、消費者契約法§10違反と指摘された。
事例B(40代男性B、トイプードル、風邪及び栄養失調と診断される)
初めて犬を飼うBは、販売員より犬が軽い風邪をひいているときいていたが、自宅に引き取ればすぐに治る程度と言われ、業者に言われるままペット共済保険にも加入し、平成17年11月、犬を引取った。家に連れて帰っても食欲がなく、ほとんど動かなかったため、翌日獣医師の診察を受けさせたところ、栄養失調と診断され、更に風邪についても、飼育環境が悪かったためではないかとの説明を受けた。
飼育に自信をなくしたBは、購入時に犬の容態や栄養の状態についての正しい説明を相手方から受けていれば契約を締結しなかったとして、購入日の翌日に犬を返し、契約の解除及び返金を求めた。
これに対し、業者は当初、契約上「契約完了後に当該ペットの返品、交換、返金、治療費等を含む損害の賠償など経済的負担を強いる一切の行為を要求することはできない」と定めているとして、解約を拒否した。
その後、業者が折れてきて、犬の価格の半額10万円につき返金に応じると返答あったが、Bは、ペット共済保険も払っており、一部返金では納得できないとして紛争となった。
消費者被害救済委員会における紛争和解において、業者の適切な情報を提供する義務違反を認め、Bが既に犬を返還していることでもあり、当該犬が健康体であったならば発生しなかった費用全てを含め、約27万円の損害賠償(ペット共済保険代を含む)を認め、Bの主張に沿った合意に至った。
業者が病気の犬を販売し、家に連れて帰って治療すれば容易に健康を回復するとの不適切な説明をして販売した行為は、消費者契約法§4T@(不実告知)に該当し、債務不履行乃至不法行為として、契約の解除・損害賠償の請求ができるとした。

【ペットの売買事故判例】

(7-1) 【横浜地判平3.3.26】 2,500万円

スーパー忠実屋小田急相模原店屋上のpet shopで、手乗りインコの雛2羽を購入し、家族5人で自宅1階の居間で飼育していたところ、オウム病クラミジア(人畜共通伝染病)に感染していたインコから、その後家族が次々にオウム病に罹患し、うち1名(妻、36才)が特に重篤なオウム病性肺炎を発症して死亡した。昭和58年2月7日に購入したインコは、オウム病クラミジアにより1羽は2月28日に死亡、もう1羽も3月11日に死亡した。死亡した妻は、2月中旬から風邪の症状を呈し、2月下旬からは高熱・食欲不振が続き、3月上旬から右気管支肺炎により通院していたが衰弱が激しく、3月31日に死亡したのだ。夫も同様にオウム病に罹患し、一時意識不明となったが、10日ほど入院して、幸いにも回復、3人の子どものうち二人(長男と三男)も同様の症状が出たが軽度であった。また、夫婦が共に病床にあったため、2月末から3月中旬の間、妻の母親が家族の手伝いに来ていたが、彼女もその間に同様の症状になり、通院治療を受けた。この家族が、オウム病に感染していたインコを販売したとして、「ペットショップ矢島」と、そこに営業を許可していた(株)忠実屋に損害賠償を請求した。裁判で認定した原告の損害額は3,550万円。

スーパー忠実屋は、pet shopに50uのスペースを貸しているだけであり、うちは免責だと主張したが、商法§23の名板貸人の責任があると判断された。またpet shopも、生きものを売った時点でインコに異常がなければ、その後病気になったとしても買主の責任だ、仮に自分が売ったインコがオウム病クラミジアを保有していたとしても、元々動物は雑菌を持っていて危険なものであり、飼主が抗生剤を与えれば容易に防止できると言い逃れしたが、動物の売主は感染予防対策を講じる注意義務を負うとして、債務不履行責任は免れないとされた。裁判では原告に3,550万円の損害額が認められたが、恐らく、原告は、pet shopのオーナーの資力を考慮して2,500万円のみを請求したと推測され、判決は請求額2,500万円全額を忠実屋とpet shopに命じた。(場所貸しをしていただけのスーパーに対する責任追及が認められるとは予想していなかったのかもしれない)