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トップ>ペット法務/5.預かったペットに関する事故






知人からペットを無償で預かる行為は寄託契約に該当します。無償寄託契約においては「自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う」(民法§659)ので、預かった人が自分の能力に応じた注意義務を果たして、自分なりに精一杯注意していれば、預かった人は犬が引き起こした事故に対する損害賠償責任を負う必要はありません。あくまでも、無償で預けた知人が責任を負います。
ペットシッターのように有償で預かる場合は、有償の寄託契約又は委任契約が成立し、受寄者又は受任者の資質や能力とは関係なく、通常期待される高度の注意義務(民法§644:善管注意義務)が要求されます。犬を預かっている間にペットシッターの不注意で事故が起きた場合にはペットシッターが損害賠償責任を負わなければなりません。

預かっているペットが他人に危害を加えた場合、事前に飼い主がペットの性質などをよく説明していなければ、飼い主の過失とみなされますが、飼い主がペットの性質などを充分説明し、預かった人がこれを理解していたのであれば預かった人の責任となります(民法§661:受寄者がペットの性質などを知っていた時)。 ペットシッターに特段の不注意がないときに事故が起きたという場合でも、被害者に対しては民法§718により犬の占有者としての責任が発生します。
基本的に不可抗力並みの抗弁事由でもない限り占有者の責任は免れることができず、被害者は占有者が不注意であったことを立証する必要はありません。飼い主とペットシッターは、犬の所有者と占有者として、ペットの性質などを丁寧に説明して思わぬ事故を未然に防ぐように注意すると同時に、事故が起こった最悪の場合を想定して預ける前に契約を結ぶことが大切です。




知人の飼い犬を一時的に無償で預かっている間にその犬が他人の飼犬に怪我をさせられたという場合、無償寄託契約になりますので、「自己の財産に対するのと同一の注意をもって」(民法§659)犬を保管する義務を負うだけですから、その人なりに普通に注意していたのに事故が発生したというときにまで、預かった人に、責任問うことはできません。

いつも通り、綱をつけて散歩をさせていたときに放し飼いの犬が急に襲い掛かった、という予期せぬ事態まで責任を負う必要はないということです。この場合、治療費は当然のことながら加害犬の飼い主に請求すべきですが、放し飼いの犬の飼い主がわからないときは、預かった犬の治療費やそれに付随する諸経費は無償寄託者である知人の負担となります。




ペットシッターのような有償で預かっている場合の事故についてはペットシッターが善管注意義務を履行することが期待されますので、携帯電話に夢中になっているちょっとしたすきに起きた事故など明らかにペットシッターに過失がありますので、飼い主に対して損害賠償の責任を負うことになります。
ペットホテルが預かっていた犬(チワワ)を従業員が散歩をさせている間に偶然ひもが外れて逃げ出したという事件において、福岡地判平21.1.22はペットホテル従業員の過失を認めて、愛犬を失った飼い主の精神的苦痛に対し慰謝料など60万円の支払いを命じています。(原告の請求額は150万円)


【預かった犬の事故の損害判例】

(5-1) 【千葉地判平17.2.28】 150万円
犬の繁殖を行う女性ブリーダーが、pet hotelの女性経営者に犬の飼育管理を委託したところ、経営者の寄託契約上の債務不履行により犬が死亡したとして1,200万円の損害賠償を請求した。9匹預けた犬のうち、6匹の犬の死亡による財産的損害額を830万円、犬の死亡の他2匹の犬の傷害(片目失明、片耳欠損など)による精神的苦痛につき慰謝料210万円、他に既払の委託料20か月分160万円の合計である。6匹の犬(1匹100万円以上で米国から輸入した)の死亡による財産的損害額を、民事訴訟法248条を適用して合計80万円と裁判所が認定し、ブリーダーの精神的苦痛につき慰謝料70万円を認めたため、寄託契約の債務不履行に基づく損害賠償金は150万円認められた。このブリーダーは、当初は9匹の犬を委託料月額10万円でこのpet hotelに預け、1匹死亡後は8万円で預けていたが、pet hotel側はその後5匹が死亡してもその事実を伝えず委託料だけを受け取っていた。判決では、pet hotel経営者は、他人の犬を扱うプロとして、犬の飼育につき適切な管理を行うべき義務があるとして、善管注意義務違反があったと認めた。犬の死亡原因は特定されず、犬同士の喧嘩による傷害又は病気によると推察される。


(5-2) 【大阪地和解平29.4.28】 45万円
Tea cup Poodle(小型犬、11か月、雄、2.2kg)がトリミング後に、台から飛び降りて骨折したのはdog salonの不注意によるとして、飼主が約97万円の損害賠償を求めた訴訟で和解が成立した。Dog salon側が解決金45万円を支払う。従業員がトリミングを終え、撮影用の台に乗せた時、店の電話が鳴ったため、50秒ほど従業員が目を離したすきに、高さ40cmの台から飛び降り、左前脚を骨折した。その結果、動物病院に2週間入院することになり、治療費が高額になった。この犬種はToy Poodleの中でも超小型で、足の骨は割り箸のように細いと言われる。訴訟では、40cmの台から飛び降りて骨折することが予想できたか争われたが、結果的に骨折したことは事実で、dog salon側が注意義務違反を認める形で和解した。


(5-3) 【仙台地判平29.1.13】 42万円
Pet salonを併設するPet shopで、飼犬(Chihuahua、当時7才)がトリミング中に、高さ約80cmの作業台から転落死した。従業員が飼犬のひげをカットしている最中に電話が鳴り、電話対応のため作業台に背を向けていた時に起きた事故、飼犬は台とリードでつながれていたが、,暴れた弾みで首輪が外れ、台から落ちて死亡した。飼犬の転落死はPet shopが安全管理を怠ったためとして、Pet shopの運営会社に340万円の損害賠償を求めて訴訟を起こした。裁判官は、従業員ひは飼犬が台から落ちないよう注意する義務があったと認定し長年、家族の一員としてかわいがっていたペットが突然事故死し,飼主が受けた精神的苦痛は大きいとして,Pet shop側に42万円の賠償を命じた。


(5-4) 【東京地判平25.8.21】 29.5万円
夫婦が、Dog hotel(名称「Tokyo Dog」)に飼犬を5日間寄託したところ、dog hotel経営者の母親(dog hotelの掃除係)が預けられたペットの世話や店内の清掃を行っていた際,犬を檻から出してペットの作業場内で自由に動けるようにしていたにも拘わらず、店舗の外に出るまでの2つのドアを解放したままとしたため、犬が外部に逃げ出し、その直後,約180m離れた路上で自動車に跳ねられて死亡した。夫婦は掃除係の母親に対して民法§709に基づく不法行為、dog hotel経営者に対して民法§715(使用者の責任)に基づく総額220万円(主に慰謝料)の損害賠償を請求した。裁判官は、葬儀・四十九日法要費用6.8万円、慰謝料20万円、ほか弁護士費用等合計約29.5万円の支払いを命じた。

(5-5) 【東京地判平26.5.19】 15万円返還命令
生後4か月の仔犬(Toy Poodle、体重1.5kg)をpet hotelに預けたところ、pet hotel側が一瞬目を離したすきに仔犬がウッドデッキから落ちて足を骨折し、飼主がペットトレーナーでもあるpet hotel経営者に慰謝料など総額1,044万円の損害賠償を請求した(仔犬の買値は30万円だが、慰謝料600万円、将来の義足代260万円、入院付き添いの間の逸失利益=休業損害145万円など)。経営者は飼主による責任追及のきつさに適応障害を発症、仕事も継続できなくなるほどになって、今度は逆に、飼主の不法行為に対する損害賠償として約104万円を払えと訴えた。確かにペットを預かる専門家として、わずかなスキにでも高さ20cmの階段から仔犬が落ちると骨折もあり得ることは予見できたはずで、適切な管理を怠ったことにより発生した損害賠償の責任が肯定されたが、経営者側は仔犬の治療代などのほか見舞金等として56万円ほどを支払った上に、仔犬の入院中の付き添いなどもさせられ、充分償っており、これ以上の損害賠償義務はないと判示された。一方のpet hotel側が飼主の非常識な誹謗中傷行為(ペットトレーナーである経営者を罵るようなメールをわずかな期間に67通発信したなど)に対する不法行為は過剰な精神t歴負担を押させるもので社会通念上許容し得る限度を超えた違法行為と裁判官は認め、同時に、経営者側の過失も認められるので、慰謝料は15万円が相当であるとして、飼主に15万円の支払いを命じた。