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トップ>ペット法務/13.ペットに遺産を残す方法





わが子のように育ててきた最愛のペットをこの世に残して自分が先に死んだ場合、残されたペットにどのような運命が待ち受けているであろうか。この種の心配をする飼い主にはペットのために遺産を残すことにより、ペットが幸せに天寿を全うしてその遺骨も自分のお墓に入れてもらうことを「後見人」に託す制度があります。ペットは法律上「モノ」ですから直接遺産をもらうことはできませんが、飼い主は信頼おける「ペットの後見人」を選んでペットが天寿を全うするまで真心をこめて面倒をみることを条件に、その人に財産を贈与する旨の遺言を残すのです。形式上負担付遺贈(民法§1002)及び負担付死因贈与(民法§554/§553)の二種類がありますが、いずれの形式でも飼い主の死亡により効力が発生しますので、万が一ペットが先に死ぬと遺贈又は贈与はなかったことになります。自分が先に死ぬと確定している場合は遺言の形にせず負担付生前贈与(民法§553)とすることもあり得ますが、これは現実的ではないでしょう。

第三の方法として信託契約があります。飼主が委託者となり、信託事務を受けてくれる信頼できる人(親族やペット仲間の知人等)を受託者として、委託者と受託者の間で信託契約を結びます。飼主亡き後(又は病気や怪我で介護が必要になったりして、飼養できなくなった後)、次のペットの飼主を受益者として、一定の金銭を受益者に定期に支給する仕組みです。

遺言による負担付遺贈は「ペットが天寿を全うするまで面倒をみる」という負担を受け入れた受遺者に遺産をあげるという意思表示です。飼い主が生前からペットの面倒はXXさんに頼みますということで本人の合意を得た場合にXXさんが受遺者になるというケースがほとんどだと思いますので、人を見誤ることがない限り受遺者がお金だけもらってペットの世話を全然みないということはないでしょう。それでも飼い主が心配な場合は、受遺者のほかに遺言書で「遺言執行者」(民法§1006)を指定し、遺言執行者にきちんとペットの飼養が行われているかチェックしてもらうこともできます。具体的にペットの世話を頼むことができる人が決まっていない場合は、遺言によりきちんとした動物愛護団体などを受遺者とする負担付遺贈とすることも可能です。

遺贈よりもっと契約の要素が強いのが「死因贈与」です。負担付死因贈与契約は贈与者の死亡によって効力を生じる双務契約であり、贈与者と受贈者双方の合意により成立します。個人に限らず法人でも団体でも受贈者になることができます。契約の当事者である受贈者は単なる受遺者(飼い主の遺言書に記載された負担付遺贈における遺産の譲受人)よりもっと積極的にペットの面倒をみると約束した本人ですから、負担付遺贈の場合よりペットが面倒を見てもらえる確実性が高いと言えます。それでもやはり「負担付遺贈」と同じように、お金だけもらって飼い主の期待に添う面倒を見てくれないという危険は避けられませんので、遺言執行者(行政書士でも動物愛護団体等でもよい)を契約に明記してペットが天寿を全うするまできちんとペットの飼養が行われているかチェックしてもらうこともできます。

「負担付遺贈」にしても「負担付死因贈与」(あるいは生前「負担付贈与」)にしても、ペットの面倒をみるべき者がお金だけもらって義務を果たしていないと遺言執行者が判断した場合は、受遺者又は受贈者による債務不履行を理由に裁判所が「負担付遺贈」・「負担付死因贈与」の撤回を宣告することになり、それまでの飼養に係る費用を除いた残余の金員を遺言執行者の指定する別の「ペットの面倒をみるべき者」に引渡します。従い、ペットの飼主は遺言執行者も指定していれば、ほぼ確実にペットが天寿を全うするまで面倒をみてもらうことができると考えて間違いなさそうです。

ペット信託契約の場合は、信託監督人を定めておけば、信託監督人が、ペットが適切に飼育されているか、飼育費が適正に使われているかなどをチェックすることができます。

アメリカで一匹の犬に10億円以上の遺産を残す富裕層の話題がニュースになっていますが、ペットに巨額の遺産を残す場合は遺産管理の問題もあるので、「負担付遺贈」・「負担付死因贈与」ではなく、契約又は公正証書遺言で「信託」制度を利用します。「信託制度」(信託法)とは、他者のために財産を預かり、一定の目的に沿って管理・運用・処分することですので、委託者(ペットに遺産を残す飼主)が受託者(信託銀行など)に自分の代わりに財産を預け、ペットのために管理・運用・処分してもらう制度です。受託者たる信託銀行が自らペットの面倒をみることもできますが、通常は「受益者」(世話人)が指名され受益者は信託銀行(受託者)からペットの飼養に要する経費と報酬の交付を受けます。世話人の飼養が適切かどうかをチェックするため更に信託監督人(信託法第四章第四節第二款)を置くこともできます。ペットの死後、残余財産は受益者又は法定相続人に帰属します。或いは、目的信託といって受益者を定めずペットの飼養と死後残金の使用目的を定める信託を設定することも可能です。この場合は、委託者が直接世話人(受益者)を指定するのではなく、信託管理人(信託法第四章第四節第一款)を指定して、信託管理人に誰にペットの飼養を依頼するか一任することになります。信託管理人は世話人(動物愛護団体でもよい)がペットを適切に飼養しているかチェックする善管注意義務を負いますので、まず間違いなくペットは幸せに天寿を全うすることができるのでしょう。ペットの死後、残った財産は信託の目的に沿って処分されることになります。

2007年、享年87歳のレオナ・ヘルムズリー夫人(Ms. Leona Helmsley)が心不全で亡くなったとき、ペットのMalteseに遺産の一部1,200万ドル(約11億円)を信託財産(trust fund)として残し、夫人の弟を信託管理人に指名しました。(この弟には犬の管理費用として1,000万ドル遺贈)この生前の脱税女王には法定相続人として四人の孫がいましたが、問題のなかった二人の孫には各500万ドルずつ遺産を残し、嫌われていた二人の孫には一切遺産を残さなかったので元不動産女王の不可解な行動が話題になりました。飼い主が脱税して投獄までされ蓄積した私財を自分の名の信託財産として残してもらった幸運なMalteseはいずれ天寿を全うしNew York州West ChesterにあるHelmsley夫人のお墓で再会することになるのでしょう。その後の裁判で、Malteseの飼養に必要とされない1,000万ドルは犬の遺産から外され、その内400万ドルは信託の目的に沿いイスラエルの医療研究機関三団体に寄付され、残り600万ドルは遺産をもらえなかった二人の孫に「祖母との確執について公にしないこと、祖母についてのあらゆる書類を裁判所に引渡すこと」を条件に分配された。このMalteseの飼主によれば"Only the little people pay taxes."(貧乏人だけが税金を払えばよい)のだそうです。

【New York 2011年6月9日】
アメリカの新聞は、2011年6月9日、11億円の遺産をもらった超富裕犬(Maltese)が12才で2010年12月13日に亡くなっていたと発表した。2007年に飼主の女性がなくなってからは年間10万ドル(800万円)をかけてホテルで暮らしていた。食事代10万円($1,200)美容院代60万円($8,000)以外はほとんどが犬の警備費用という。これだけの遺産をもらってダイヤモンドの首輪をしている犬だから多数の誘拐・殺害の脅迫を受けていたので、専用のガードマンがつけられていたのだそうだ。New Yorkの裁判では夫人が犬に1,200万ドルの遺産を残すとした遺言を書いたとき彼女は心神喪失状態にあったとして犬への遺産は200万ドルに減額されたが、それでも残された犬が3年4ヶ月で使った費用はたかだか35万ドル。犬が残した遺産165万ドル(約13,000万円)は信託の目的に従い慈善団体に寄付された。夫人は犬の死後亡骸を自分のお墓に入れてくれるようにとの遺言を残していたが、これは墓地管理委員会が動物の埋葬を認めないため実現しなかった。Malteseは死んで遺産を慈善団体に寄付したので天国に行けるだろうが、何十万ドルもの宝石を買って税金を脱税していた罪で1年7ヵ月も投獄されていたHelmsley夫人は天国以外の場所で眠っているはずだから、あの世で愛犬Malteseと再会することはかなわないのではないかとNew York市民は心配しているらしい。
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Ms. Leona Helmsley with her Maltese Trouble

■2010年3月、癌で亡くなったゲイル・ポスナー夫人(Ms. Gail Posner)に至っては、マイアミビーチの大邸宅(7LDK, 評価額830万ドル)を生前の女性秘書(兼家政婦:Elizabeth Beckfort)と愛犬chihuahuaに使わせるとの遺言と共に、chihuahuaには別途300万ドルの信託財産を、女性秘書にはchihuahuaが天寿を全うするまで自分が注いだと同じ愛情をもって飼養するという条件の負担付遺贈500万ドルを残しています。この女性の息子で唯一人の相続人は母親からの遺産が自分に100万ドルしか残されていないとchihuahuaを相手に裁判を起こしており、今後の成り行き次第ではchihuahuaの取り分が減額される可能性大ですが、少なくとも女性が亡くなった時点でchihuahua側に総額1,630万ドル(約15億円)の遺産が残されています。

   
    チワワを抱くポスナー婦人 NBC Universal Inc. ホームページより