大阪・岸和田のアミ・インターナショナル 行政書士事務所                                  クーリング・オフ、国際法務、ペット法務はお任せ下さい。
  
  
(9A)ペットの虐待事件判例


(9-1) 【東京地判平28.12.14】 121万円(他に罰金20万円)
子供のいない夫婦が飼っていた猫と隣の犬(Welsh Corgi)が喧嘩したので、犬の飼主の男が自分の犬をかばってスコップを使い手加減なく猫を何度もたたきつけた処、その猫が大けがをして4日後に死亡した。猫が虐待されているのを発見した飼主妻がやめさせようとして通院2週間の障害も負った事件。ひどい殺され方をした猫の飼主は強い精神的苦痛によりうつ状態と診断され1年ほど通院する羽目になり、慰謝料など総額1,155万円の損害賠償を犬の飼主に請求して訴えた。判決で、犬と猫の喧嘩を止めるために、金属製スコップで猫を何度も、手加減なくたたき付け、けがを負わせることは、手段として不相当であり、また、猫を死に至らしめたことは、防衛される利益との関係でも著しく権衡を逸しているとして、猫の飼主夫婦に夫々50万円ずつの慰謝料を含む合計121万円の支払いを命じた。

なお、この事件は平成24年8月11日に発生したものだが、東京簡判平25.3.7にて、男には器物損壊罪により罰金20万円の略式命令が出ている。犬の飼主は猫の飼主夫の義兄に当たる。この事件の5年ほど前に、犬が猫に引っかかれて目の角膜裂傷を負う事件があり、犬の飼主が猫を恨んでいたという事実があるものの、猫を虐待死させる合理的理由はないとして、やむを得ない行為とは認められなかった。


(9-2) 【 広島地判平24.11.22】 動物愛護法違反 猫虐待に罰金60万円
広島市南区の自宅マンションで、飼猫1匹の頭部を手で数回殴り、けがを負わせたとして、動物愛護法違反の罪に問われた広島市南区の無職の男(37)に対する判決宣告があり、被告人は、起訴事実や他の猫への虐待を認め、検察官は懲役刑を求めたが、裁判官は,以前にも虐待していたのに猫を譲り受けて虐待しており、動物愛護の精神が著しく欠けるが、事件後は虐待の問題を理解し、動物愛護を誓っているとした上で、他の猫への虐待の事実は起訴されていない余罪であり、量刑に含むことはできないとして、罰金60万円(求刑懲役6月)の判決を言い渡した。


(9-3) 【尼崎簡判平20.7.31】 動物愛護法違反 猫踏み殺し罰金20万円
尼崎市内の浄水場内において、警備員の男が飼主のいない子猫の頭部を足で踏みつけてみだりに殺した事件が発生、事件を目撃した市民が中心になって告訴したところ、男は「間違えて踏んでしまった」との当初の弁解を翻し、子猫を故意に踏みつけた事実を認めるに至った。命ある子猫を一撃で踏み殺した行為は許せないと、尼崎市民及び動物愛護団体等の1万名ほどの署名を集めた要望書も裁判所に提出され、男には動物愛護法§44T・W@違反の罪で罰金20万円の判決が言い渡された。(もっとも、飼主が判明していた場合であれば、被告は民事上の損害賠償責任も問われる)。


(9-4) 【伊那簡判平15.3.13】 罰金15万円
長野県の乗馬牧場経営者が、馬2頭を著しく不衛生な環境で飼育し、充分な給餌をせず、結果的に栄養障害状態に陥らせる虐待を行ったとして、動物愛護法違反により、検察より罰金30万円を求刑された事案(動物愛護法§44Uは100万円以下の罰金を規定する)。American Quarter horse1頭とShetland pony1頭を飼育していたこの経営者は、5年以上もの間、馬に飼料必要量(1日当たり約11.3kg)の半分以下の飼料しか与えず、馬2頭をそれぞれ栄養消耗症及び栄養失調症に陥らせ、愛護動物の飼育者としての監護を著しく怠っていたと訴えられた。給餌又は給水を充分与えず愛護動物を不健康な状態に陥らせる行為は、動物愛護法上の虐待に該当し、飼主を信頼して従順に空腹に耐えていた馬が誠に不憫であると裁判官は言う。但し、飼主は、傷害ないし病気の影響で体が不自由になったため、経済的余裕もなくなり、やむなく結果的に虐待をしたとも推察され、この点を斟酌して、罰金15万円又は30日間労役場に留置の刑を言い渡した。


(9-5) 【横浜地判平24.5.23】 詐欺罪等で猫虐待殺傷に懲役3年
猫の保護活動をしていた女性3人から、殺傷目的を隠して猫5匹を譲り受け、3匹について、10mの高さの階段上から投げ落としたり頭を足で踏み付けたり壁にたたき付けたりして殺したほか、2匹については顔面を床にたたきつけるなどして重傷を負わせたとして無職の男(45)が動物愛護法違反と詐欺罪(刑法§246)に問われた。男はわずか1週間のうちに3人の女性から合計5匹の猫を騙し取り、その直後に次々と虐待殺傷していたが、飼主に対しては「終生家族の一員として愛情を持って育てていきます。最後まで責任をもって飼養します。」等と記載した誓約書の譲受人氏名欄に署名押印をしており、殺傷の態様は残虐で悪質極まりないと、懲役3年を言い渡された。裁判官は、飼主である被害者らの受けた精神的苦痛は計り知れないが、男が患っている躁鬱病の影響も否定できない、今後は男の両親が息子を監督すると約束していることなどを考慮し、保護観察付き執行猶予5年とした。


(9-6) 【東京地判平29.512.12】 13匹の猫を虐待殺傷害した税理士に懲役1年10月
愛護動物である猫13匹を捕まえ、1年余りの間に、金属製捕獲器に閉じ込めた上,全身に熱湯を何度もかけたりして9匹を殺害し、4匹に重傷を負わせ、その犯行の様子を撮影した動画をインターネット上に投稿した税理士が、動物愛護法に違反したとして、懲役1年10カ月の判決を言い渡された。虐待の態様は、熱湯をかける他、ガスの炎であぶったり、ロープで首をつるし、熱湯を満たした缶に漬けたりするなど、残虐なものであり、その凄惨な動画を見た者が強い嫌悪感や憤りを覚えるものであった。繰り返し虐待するうちに、税理士は、虐待行為自体に楽しみを覚えるようになったと供述する。社会に大きな影響を与えた常習的犯行であるが、勤務先の税理士事務所や自分の家族に嫌がらせをされたりして、男は税理士を廃業するに至り、社会的な制裁を受けていることを考慮し、執行猶予4年が付された。


(9-7) 【札幌地判平28.10.7】 自己の牧場で競走馬2頭を射殺 懲役1年
競走馬を飼育していた男が、自身の経営する牧場で、自身が飼育していた競走馬2頭に向けてライフル銃を発射して射殺した事件で、銃砲刀剣類所持等取締法違反、動物愛護法違反の罪に問われた。牧場経営の資金繰りに窮し、債権者から破産手続開始を申し立てられたため、飲酒をして、やけっぱちで起こした危険かつ悪質な犯行であり、競走馬2頭の射殺という重大な結果が生じているほか、近隣の住民や同業者に与えた影響は計り知れず、懲役1年の刑を処するとなった。但し、銃砲所持の許可証を返納したことから、再犯の可能性は低いと認められ、また、今後は妻が指導監督に責任を持つと誓っていることから、執行猶予4年が付された。


(9-8) 【福岡地判平14.10.21】 懲役6月
福岡市在住の男が、拾ってきた猫一匹の尾及び左耳をはさみで切断してみだりに傷つけた上,その頸部をひもで絞めつけ,自宅アパート付近の川に投げ捨ててみだりに殺し、その様子をインターネット上で公開して犯行がばれ、逮捕拘束された。捜査当初は、猫は死んでおらず逃げていったなどと虚偽の弁解をしたが、証拠を突き付けられ犯行を認めるに至った。面白がって動物虐待・虐殺を現実に実行した行為は、動物愛護法§44T(2年以下の懲役又は200万円以下の罰金を規定する)により厳罰に処せられるべきであるが、犯人が、人間関係が苦手で社会的にも未熟な青年であること、前科前歴がないこと、既に異例の長期の身柄拘束を受けていることを斟酌して、求刑通り懲役6か月の判決を下したものの、同時に執行猶予3年を言い渡し、社会内での更生の機会を与えた。