大阪・岸和田のアミ・インターナショナル 行政書士事務所                                  クーリング・オフ、国際法務、ペット法務はお任せ下さい。
  
  
(10A)ペットの医療過誤判例


(10-1)【札幌高判平19.3.9】  2,051万円
ばんえい競馬の競走馬が喘鳴症(喉頭片麻痺)と診断され、喉頭形成手術を受けた際に,獣医師が縫合針等を残置するなどずさんな手技で処置したため、感染症から呼吸困難におちいり、安楽死せざるを得なくなったので、馬主が病院を運営する農協に損害賠償を請求した事案。判決で裁判官は獣医師(診療部長)の医療過誤を認め,更に縫合針の残置と競走馬の死亡に因果関係があったと認定した。この馬は2才の時に500万円ほどで購入したものだが、死亡時4才、少なくとも8才まで活躍できるとして、治療費等(65万円)の積極損害及び休業損害(178万円)、死亡逸失利益(784万円)、種馬としての価値(822万円)等消極損害も含め合計1,851万円の価値を認めた。更に、弁護士が旭川市、東京都内に事務所があり、第一審が釧路地裁北見支部,控訴審が札幌高裁であること、馬の医療過誤訴訟という特殊性も考慮して弁護士費用として200万円が認められ、合計2,051万円の損害賠償を命じられた。40戦12勝(勝率3割)の成績を持つ競争馬においては、単に医療過誤といえど、獣医師は細心の注意をもって治療しなければ莫大な損害賠償責任を負うという例である。獣医師側は「裁判で将来の賞金獲得可能性を加味することは非現実的だ」と主張したが、裁判官は、現に実績の出ている馬であれば、引退まで後4年、少なくとも2割4分の勝率で活躍するはずだと馬主の味方をした。



(10-2) 【東京高判平19.9.27】  141万円
獣医師が、犬の蓄膿症治療のための卵巣子宮全摘出、口腔内腫瘍治療のための下顎骨切除、及び乳腺腫瘍切除の3つの手術を同時に行って、結果的に犬を死亡させたが、腫瘍は良性で不必要な手術であったばかりか、どのような手術をするかなど飼主にろくに説明もせずに不必要・不適切な手術を行ったと、裁判で獣医師の過失を認め、飼い主親子三人に対する慰謝料105万円も含めて、約141万円の損害賠償を命じた。獣医師は、飼主が、医療行為の内容その他危険性等を充分に理解した上で意思決定ができるために必要な範囲の事柄を、事前に説明する義務がある。獣医師の不法行為に基づく損害賠償責任を認めた。



(10-3)宇都宮地判平14.3.28】  93万円(控訴後和解)
American short hair種日本第1位に入賞実績のある5才の猫に避妊手術を施したところ、3日後に死亡、手術に際して獣医師が誤って左右双方の尿管を結紮した過失が認められ、93万円の損害賠償を命じた。獣医師は、猫の死亡原因は、手術前から存在した肝不全及び腎不全が、麻酔を契機に急速に悪化し死亡したと説明したが、裁判官を納得させられなかった。



(10-4) 【東京地判平16.5.10】  80万円
日本スピッツの飼主は約10年にわたり、愛犬の成長を毎日記録しつつ、わが子のように可愛がって育てていた夫婦(自分たちの子供はいない)で、定期的に健康診断も受けさせていたのに、獣医師の治療ミスであまりにも早く「わが子」を亡くした精神的苦痛は非常に大きいと裁判官も認めた。たまたまこの犬は日本スピッツ協会のチャンピオンになったこともある優秀なオスであり、同種犬の平均寿命が15年とすれば、正しいインスリン療法を施してしてもらえばまだまだ元気に活躍してもらうことができるはずであったところ、獣医師は、血糖値が高い犬に対するインスリン療法は、心不全の危険があるとの理由で採用せず、自らの誤った医学的判断に基づいて食事療法・運動療法・輸液療法,生理食塩水の点滴等で治療するのが最適療法であると述べ、従って善管注意義務に違反することはないと主張したが、判決では「犬の糖尿病は、ヒトの糖尿病と大きく異なるところはない」のであって、「犬の糖尿病は病状が進行した状態で発見されることがほとんどであるため、大部分がインスリンの投与を必要とする」と断定され、獣医師として必要なインスリン療法を行わなかったことに善管注意義務違反があると過失が認定された。そして、インスリン不投与と死亡の相当因果関係については、インスリン投与が早ければ早いほど救命可能性が高くなると考えられるから、インスリン療法を行うことによって犬の死亡は避けられたと結論づけた。

ペットの犬は、声明を持たない動産とは異なり、個性を有し、自らの意志によって行動するという特徴があり、飼い主とのコミュニケーションを通じて飼い主にとってかけがえのない存在になることがあり、原告夫婦らの生活において、本件患犬はかけがえのないものとなっていたことが認められる、として、夫婦それぞれに30万円、合計60万円の慰謝料を含む、総額80.6万円の損害賠償を命じた。    →判決詳細



(10-5) 【大阪地判平9.1.13】  70万円
猫の繁殖業者がAbyssinian種の猫(当時2才1ヶ月)の出産を、電話帳で見つけた動物病院に依頼し、帝王切開ができるか確認して「できる」というので連れて行ったところ、自然分娩で大丈夫と言われて、獣医のすすめに従い自然分娩を承諾した。但し、過去2回は全て帝王切開にしていて、いつもの病院(南大阪動物医療センター)が、その日、主治医不在で帝王切開できないというので、別の病院を見つけたもの。

猫を病院に連れて行くと、獣医は陣痛促進剤を20分間隔で2回投与、2回目の注射から25分後に母猫が死亡、その後2匹の胎児も死亡した。獣医が投与した陣痛促進剤は、ヒトに使用するウテロスパンであったことが裁判で認定され、診療契約上の注意義務違反、債務不履行責任が認められた。帝王切開の経験があるものにこの陣痛促進剤を使うのは危険である上、成人に投与すべき適量の2倍の量を20分の間に投与したのだから、猫は即死して当然だった。獣医師が裁判に提出した診療録には正しい陣痛促進剤「プロスタルモンF50」の記載があるが、改ざんの跡があり、しかも、繁殖業者が注射後の空のアンプルを手にとって確認し、翌日いつもの南大阪動物医療センターで受診させようとしていたことから、ウテロスパンを投与したことによる死亡が認定された。

この猫はアメリカの愛猫家団体(CAF)からチャンピョンの認定を受けている特殊な猫で、1匹30万円、胎児は1匹20万円、2匹で40万円、合計70万円の財産的損害が認められ、更に弁護士費用として10万円、合計80万円の損害賠償が命じられた。繁殖業者は、猫が死亡したことによる精神的損害として50万円も請求していたが、愛玩用としてではなく、商品として飼育していたことを考慮し、慰謝料は認められなかった。



(10-6) 【東京高判平20.9.26】  63万円
免疫異常を原因とする脂肪織炎に罹患したminiature Dachshund犬(当時11才、4kg)が、犬猫病院の誤診により不適切な治療のせいで後遺障害が残り、飼主に精神的苦痛、経済的損害を与えたとして、飼主女性が431万円の損害賠償を請求した。飼主は犬のできものを心配して、近所の動物病院を何件か回ったが原因がわからず、
獣医師十数名を抱える遠くの犬猫病院で診療を受けた。しかし、獣医師は外傷性又は感染症によると判断して適切な投薬をしなかったため、3週間入院したが様態が悪化し、犬は生死の境を行き来するようになった。飼主の催促により、犬猫病院は日大病院を紹介し、そこで、免疫異常を原因とする脂肪織炎とわかり、適切な投薬によって一命を取り留めたものの、生涯後遺症が残った。(結果的に16才で死亡した) 裁判官は、犬猫病院獣医師の過失を認定し、飼主の慰謝料40万円を含む約63万円の損害賠償を命じた。

民法上、犬は「物」とされるが、飼主のペットに対する愛情は民法§416Uにいう「特別の事情」に該当し、ペットを失った飼主には慰謝料請求権が発生するとした。また、獣医師の診療契約の義務として、自分で治療できなければ、それが可能な高次医療機関を紹介する義務を負うと判示した。



(10-7)【東京地判平28.6.16】  43万円
ペットのウサギが動物病院で歯の治療を受けた際にアゴの骨を骨折し、その3カ月後に死亡したとして、ウサギの飼主(女性)が東京都品川区の動物病院に損害賠償を求めた裁判で、動物病院に約43万円の損害賠償を命じる判決を下した。平成23年12月、ウサギ(当時5歳5カ月)の歯の治療を依頼、動物病院で治療を受けたが、治療後、女性がウサギにエサを与えても食べず、水を飲ませようとしても口からこぼれ落ちるようになったため、2日後に別の動物病院でレントゲン検査を行ったところ、下アゴの骨折が判明した。そして、骨折から3カ月後の平成24年3月、ウサギは尿の排泄障害が原因とみられる腎不全で死亡した。原告は、動物病院の院長がウサギの歯を治療するために口を器具で開けた時に、誤って無理な力を加えた結果、アゴが骨折したと主張、死因は、アゴの骨折によって、ウサギが水分を充分に摂取できなくなったためだとして、動物病院に、治療費や慰謝料など約134万円の損害賠償を請求した。被告の動物病院は、ウサギの口を開ける器具の使用方法に問題はなく、院長の処置によってアゴの骨折が生じたとはいえないと主張。死因については、ウサギに既往症があったことや、適切な食事管理ができていなかったことなどが考えられ、ウサギの死亡と骨折の間に因果関係はないと主張した。判決は、「骨折は、本件処置のうち開口器により本件患畜を開口させたことにより生じたものと認めるのが相当」とし、治療行為と骨折の因果関係を認めた。そして、動物病院の注意義務違反を認め、治療入院費や慰謝料など約43万円の損害の賠償を命じた。但し、ウサギの死亡については、治療行為との因果関係を認めなかった。



(10-8) 【名古屋高判平17.5.30】  42万円
かかりつけの獣医師で1年以上前から異常を訴えていたのに生検もせず、良性・悪性の判断をせぬまま飼犬(Golden Retriever、13才、メス)の左前脚の腫瘍摘出手術をして、犬の死期を早めた(手術後1か月半で死亡)と獣医師夫婦が訴えられた。獣医師の妻は獣医師資格を有せず、実際の治療は無資格の妻がしていた。獣医師側は、元々老犬であり寿命だと居直ったが、一審判決に納得しない飼主夫婦が控訴して、慰謝料30万円を含む42万円の支払いを命じた。愛犬を失う苦痛は、子どもを失った親に劣らぬ精神的苦痛であると判示した。



(10-9)【大阪地判平28.5.27】  33万円
医師・看護師夫婦とその子の三人で飼育していた小型犬パピヨン(Papillon、4.6kg、当時12才8カ月)が、動物病院で輸血を受けた後間もなく死亡した事件で、飼主が獣医師らに330万円の損害賠償を請求した。この犬は、元々脾臓に巨大な腫瘍が見つかったため全摘出手術を受けたばかりだったが、術後の予後もよくなく、貧血状態だったので、飼主(医師)が獣医師に輸血を依頼したところ、獣医師が小型犬にもかかわらず、中型犬乃至大型犬並の輸血をしたため、輸血後3時間足らずで死亡した。犬の体重により一度の輸血量、輸血の速度の標準値があるが、獣医師は基準値の3-4倍の輸血速度で基準の輸血総量の1.5倍を実施したので、循環過負荷→呼吸不全→死亡に至った、これは獣医師の注意義務違反であると認定され、いくら飼主に依頼された輸血ではあっても、獣医師の不法行為による損害賠償請求は認められるとした。但し、輸血の時点では、既に腹腔内蔵器のほぼすべてを癌に侵されている状態であったので、飼主一人当たりの慰謝料を10万円、弁護士費用を1万円だけ認め、三人で33万円の支払いを命じた。



(10-10)【東京地判昭43.5.13】  5万円
Pointerという猟犬(5才、雌)の飼主(50代男性)が、Pointerの出産を獣医師に依頼したところ、獣医師が帝王切開をして5匹の仔犬を取り出したが、そのうち4匹が死亡、しかも、術後腹部に15cm x 15cmのガーゼ7枚を残したまま縫合手術をしたため、11日後に母犬も超膜炎、敗血症で死亡した事件で、獣医師が訴えられ、飼主に30万円の損害賠償を請求された。内訳は母犬10万円、死亡した仔犬4匹10万円、それに飼主の精神的苦痛に対する慰謝料10万円。裁判官は獣医師の施術上の過失を認定し、不法行為による損害賠償として飼主の蒙った財産的損害及び精神的苦痛に対する慰謝料合計5万円が相当であるとした。(但し、1968年の判決なので、当時の貨幣価値は現在とは異なる)



(10-11)【東京地判平3.11.28】  0円
ペットのshepherd犬に、一切フィラリア予防の薬を与えていなかった男が、A動物病院で飼犬が犬フィラリア症に罹患していると診断されたため、B動物病院に連れて行き、フィラリアの検査と、フィラリアの成虫がいる場合にそれを除去する手術を委任した。B動物病院で血液検査の結果、飼犬の血液中に無数のミクロフィラリア(フィラリアの小虫)が発見されたので、心臓に寄生するフィラリアの成虫を除去する手術が必要と判断、まず経口薬でミクロフィラリアを減少させ、16日後に心臓の開胸手術を実施した。ところが、あまりにもフィラリアの成虫が多すぎて、飼犬は手術中に犬フィラリア症と先天的心室拡張とに伴う心停止により死亡した。買主は手術代金51,000円を払わないどころか、飼犬の時価60万円と慰謝料20万円を支払えとB動物病院に怒鳴り込んできた。あきれたB動物病院側が男を裁判に訴え、手術代金51,000円の支払いを求めた。飼犬が死亡した翌日、東大農学部獣医病理学教室で解剖が行われ、心臓に15匹のフィラリア成虫が寄生していること、及び先天的心室拡張であることなどが認められ、死亡診断書には、主な死因フィラリア症、副次的試飲心室拡張と判定された。

裁判官は、飼犬の死亡は、飼主のフィラリア症予防懈怠による管理の誤りに基づくものと断定、獣医師に過失はなかったと認定し、債務不履行の責任も負わないと判断した。反対に、元飼主の男には、B動物病院に手術代金51,000円支払えと命じた。